環境社会学・環境倫理研究者 福永真弓(東京大学大学院・新領域創成科学研究科・准教授)

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福永真弓研究室について

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プロフィール

福永真弓

人と自然のあいだの記憶、心象風景、言説、行為を多様なスケールの史/誌からたどり、厚い記述とその分析をもとに、価値と規範を明らかにし、社会の仕組みを問い直す。

社会文化環境学専攻/環境倫理 流域と地域社会 環境正義
東京大学大学院・新領域創成科学研究科・准教授

福永真弓 (ふくなが まゆみ)

ようこそ,東京大学大学院新領域創成科学研究科社会文化環境学専攻の福永真弓研究室(環境社会学/環境倫理)のウェブサイトへ! このウェブサイトでは,これまでの研究,現在おこなっている研究,そして,これから展開していく研究についてご紹介します.

わたしはこれまで,社会学的なフィールドワークをベースに,人と自然の関わりについて,価値や規範,人間社会側の資源利用の仕組み,そのために積み重ねられてきた知,技術,語彙に着目しながら研究を続けてきました.その際に中心に置いていた問いは,以下のようなものでした.

誰のための,どのような環境と共に在る社会をよしとするか,それはどのような理由で妥当だと社会に認められるのか.

しかしながら現在では,この問いは次のように書き換えねばならないと考えています.

わたしたちはどのような存在として他の生きものと共に生き,どのような世界を共に生み出していこうとしているのか.

わたしたちが資源を調達し,他者と生きる世界を生み出すという活動自体は,人間がずっとおこなってきたことです.里山のように,他の生きものの居場所をつくり,人間の利己的都合のみに依拠しない,他の生きものやその歴史的実在と協働するような場所もつくられてきました.過去に生きた生きものたち,人間たちもまた,不在の存在でありながら,目の前のモノ,生きものたち,景観,言葉,知識などのなかにその軌跡を残し,現在のわたしたちと対話を出来る存在としてあり続けてきました.

ただし,人新世と呼ばれる現在,人間活動はあらゆる生きものがよりかかってきた気候にまで影響を及ぼし,人間のための資源を得ることが難しいほどに,他の生きものと共に生きてきた世界の潜在性を奪ってきました.

同時に,これまで共に生きてきた他の生きものに一方的に別れを告げながら,他方で,人間のために新しい生きものが生み出されるスピードを加速させてきました.古くから囲い込みと交配による家畜化は行われてきましたが,今では,多様なハイブリッドな生きものを,遺伝子配置をデザインして生み出せるようになりました.また,生きものの形を取らないが肉としての塊をつくりわたしたちの食を支える技術も発展しています.

他ならぬわたしたちの手で大きく変わりゆく他者たち,その生きる土台となる地球を目の前に,わたしたちはどのような存在であろうとし,他の生きものと共にこの世界を生み直そうとしているのか.

目の前に生きてくれている多様ないのちを言祝ぎながら,これまでの来し方,今のわたしたちのあわいを厚い記述でとらえ,世界と向き合っていきたいと思っています.

[略 歴]
1999年
津田塾大学学芸学部国際関係学科卒業
2001年
津田塾大学大学院国際関係論専攻修士課程修了
2007年
日本学術振興会(特別研究員〈DC2〉)
2008年
東京大学大学院新領域創成科学研究科環境学専攻博士課程修了(博士:環境学)
2008年
立教大学社会学部(助教)
2011年
大阪府立大学 21世紀科学研究機構エコサイエンス研究所(准教授)
2012年
大阪府立大学現代システム科学域(准教授,新学部への移動)
2015年
東京大学社会文化環境学専攻 准教授に就任

research activities

研究活動

(1)環境の価値と規範に関する研究とプラットフォームとしての環境倫理

「誰のための,どのような環境を,保全(あるいは再生)するのか,それはどのような理由で妥当だと社会に認められるのか」.環境問題の現場では現在,技術的解のほかに,社会的解(※合意形成や参加や保全の動機形成,ルールの形成や遵守など)の必要性が重視されている.この問いについて応えるには,以下が必要となる.

  • ①価値の複数性と多数性(人びとはいくつもの価値を抱えて生きている)を前提として,時空間のスケール,変容,価値の間の関係性も捉えながら,環境に関する価値を語る「語彙」を増やしつつ,その所在を描き出す.
  • ②価値の規範化の過程において,どのような手続きと過程がありうるのか.手続きや過程がなされる空間とはどのようなものであるべきで,そこに誰がいることが必要なのか.そしてどのような「正しさ」が必要なのか.その具体的な構想とはどのようなものであるかを,公共性などを手がかりに考える.
  • ③実際に価値の共有や創出や、文脈の形成が可能なのか、それがどのように規範に結びつくのかについて、社会実験の可能性も含めて考える。
  • ④現場に軸をおいて、フィールドワークを行いながらこれらについて考える。

キーワード:多声性,正統性,文脈,討議,公共性,環境正義

※現在の具体的な研究課題
・跡地再生とデザインの公共社会学
・食の社会実験的日常:まっとうさとほんものさをめぐる政治と味覚の資本主義
・人新世時代の魚の美学
・環境正義と気候正義

(2)流域と水圏の環境社会学的研究

流域と水圏を主なフィールドワークの対象地として、その人びととの歴史的な関わりの中での記憶、物語、心象風景などを手がかりに、環境ガバナンスについて具体的に考える。
現在の主要なフィールドワーク場所は、カリフォルニア州マトール川、クラマス川流域、岩手県宮古市津軽石川、閉伊川などである。

見えなくなった水循環を、人工・生態系インフラを含めて、異なるデータを繕いながら、いかにアーティスティックに表現できるか、というプロジェクトを現在始めています。

future plan

将来計画

プラットフォームとしての倫理がどのようなものでありうるかを現場から考えたい。
また、環境思想とジェンダーについても研究を進めたいと考えている。

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